デンマークにおける女性の権利獲得のプロセス
全世界において完全な男女同権は未実現の状態だが、北欧の各国は最も理想に近いと考えられる。とりわけ、世界経済フォーラムの2012年度レポートによると、デンマークの男女格差指数(Global Gender Gap Report註1)は世界第七位である。なぜ、デンマークの男女格差指数はそれほど高いのか。女性たちが自分たちの権利を獲得する戦いのプロセスをのぞいてみよう。1871年に、デンマークにおいて、女性協会が設立され、女性の教育や財務体質を改善する活動をしてきた。1875年、女性が大学に入学する権利を得て、高等教育への門が徐徐に開かれていった。1893年にデンマーク王立芸術大学(Royal Danish Academy of Fine Arts)にも入学することができた。しかし、この権利は少数派のためだった。やっと1903年に至ると、新しい学校の法律ができ、女子が公立高校へ進学することができ、一般民衆にも教育を受ける機会が広がった。教育の権利を得てから、女性が政治に参加する機会も増加した、1908年に地方選挙の投票権を獲得し、1915年には国政選挙の投票の権利まで広まった。1915年、初めて国政選挙に投票した直後、一万人ほどの女性がデモンストレーションを行った。その内容は女性の市民権が広がったことは喜ばしいが、決して’ありがとう’と言わない、これは男女を問わず市民の一般権利と考えられたからだ。
女性博物館の誕生
「1980年代に、ジェンダーをテーマした研究が進み、そして、自動車の室内空間を利用し、いろいろの場所で展覧会を開いたのがきっかけだった、専門的女性博物館を作ろうとの話が始まった」と当時の創立者の一人Merete Ipsenさんに話しを伺った。彼女は現在女性博物館館長を勤めている。1991年に、国家認定を受けた優良博物館として、市政府の援助を得、さらに、1857年に建てられた市庁舎の一部を利用できるよになった。順調な発展をしながら利用できる空間も広がり、今や建物全体が女性博物館になった。館内は、常設展示と計画展示の二部分に分けられ、三階立ての建物で五つの展示空間がある。常設展は古代から現代まで、デンマーク女性の生活形態を示す。館では現代ジェンダーを研究しつつ、よく市民講座を開いている。また、一階は心地よい空間で、手作りケーキを提供しているカフェー店がある。「この女性博物館が市民たちの集いの場となり、繋がりの交流や知識を学ぶところになったら嬉しい」とMerete Ipsenさんが話してくれた。他の国の女性権利にも関心をもち、将来もっと国際的な学術交流したいとのことだった。
館内の客に話を伺う
館内を観察すると、女性客が大部分だった。ただ一人の男性(64歳、退職したばかり)に話しを聞いたら、古き建物で美味しいランチのために、女性博物館に来た。実際はジェンダーに興味がないと返事した。一方、驚いたことに博物館の情報をどうやって手に入れたかと聞くと、ほぼインターネットだった。60歳の客が多いにもかかわらず、英語が堪能だし、インターネットの利用が生活の一部のようだ。デンマークの教育の質や普及率はすばらしいと感じた。
ルームメートと女性の役割に関する話
ある日、ルームメートのElias(ドイツ人)と Sara(デンマーク人)と専業主婦について話しが展開した。Saraは、医学部のクラスメートが結婚してから、専業主婦になるなんてとても理解できないようで、「彼女は誰よりまじめだったのに、仕事しないなんて。私の祖母や母は結婚しても、ずっと仕事を続けたよ。」と。Eliasは、「ドイツならば、特に南方は考え方が古いので、今も女性は内、男性は外という観念が強い。」と言った。デンマークにおいて、女性が結婚して出産するまで仕事を続けられるのは、国の政策のおかげだと考えられる。ある記事(註2)によると、アメリカの女性が平均的に10.3週間の出産休暇がもらえるのに対し、デンマークの夫婦の場合合計52週間ある。特に、父親でも最大二週間100%の育児手当てを受け取ることができる。その後、育児サポートも様々ある、母親が安心して仕事に戻れる。デンマークで仕事と家庭が両立できることは、母としての誇りのようだ。
註1)Global Gender Gap Report(2006~2012年度、8ページ)
http://www3.weforum.org/docs/GGGR12/MainChapter_GGGR12.pdf
註2)huffingtonpost