・長期休暇について
バレンシア大学の冬季休暇はだいたい12月の二十日前後に授業が終了して始まりました。各人の選択した授業によって一週間ほどの開きはありましたが、概ねクリスマス前には大学の寮から人影が消え、残っているのは10人前後という情況。人によって違うのでしょうが、個人的には(毎夜のどんちゃん騒ぎが嘘のように)とても快適で静かな夜が過ごせました。クリスマス(Nochebuena・Navidad)は食堂のオバちゃんたちも消え、冷蔵庫に放置された調理済みの食べ物を好き勝手レンジでチンして食事会はしめやかに執り行われました(食べられる物は軒並み漁り尽くして、自分も含めまるで強盗のようでした)。いつもは待機列ができている遊戯室もほぼ貸切状態で、暇さえあれば卓球やビリヤードなどに興じ遊びつくしました。
またそれとは別に、地元バレンシアの友人の家に招かれ先方家族と夕食を共にしたのも良い思い出です。25日夕方に迎えに来てもらい友人宅へ、そこから料理が出来上がるまで友人やその父親・従兄弟らとゲーム(当然のようにサッカーゲーム、スペイン人は本当にサッカー関連に目がない)に興じることしばし、次々に縁者親類はてはご近所さんまで加わり、十数人が入り乱れて食事やお喋りを楽しみました(ここで食べた三種類のトルティーヤが絶品で、折を見てレシピを聞き出そうと目論んでおります)。とにかく笑いの絶えない明るい空間で、スペイン人の、とりわけバレンシア県人の陽気さをひしひしと感じられた一コマでした。
ところでバレンシアでは文化・芸術活動がそこそこ盛んでありまして、年間を通して街中で様々な催しが開かれています。なにを隠そう現在私が暮らしている大学寮でも常時なにかしらの展示会や小規模の音楽コンサートが開催されています。コンサートといえば旧市街をグルリと囲む旧トゥリア川跡の公園沿いにはPalau de la músicaというコンサートホールがあり、ここでは全日程の半分程度が無料で鑑賞出来ます。私自身何度となく足を運び、それを通じて数人の知り合いも出来、その縁で現在ギターを習っています(知り合いによる個人レッスン、無料)。ちなみに毎回必ずというわけではありませんが、コンサートの最後にはバレンシアの州歌(Himne de Valenciaで検索)が斉唱され、それ以外のバレンシア音楽が陽気さを表しているのに対し、どことなく悲壮さが漂い同時に荘厳さが強調されている曲調に圧倒されます(個人的に一番のお気に入り)。さて、そのPalau de la músicaではクリスマス前の15・16日にクリスマスコンサートが開催され、15日は予行演習で演奏者たちはカジュアルな格好で、16日の本番には正装で臨み素晴らしい演奏がなされました。どちらも無料だからというわけではないでしょうが、当日会場前は長蛇の列(チケットは当日開演前しか入手できないため)で結局入場できなかった人も少なくはなかったと思われます。日本でもお馴染みの”聖しこの夜(Noche de Paz)”をはじめvillancicosと呼ばれる様々なクリスマスソングが好演され、大盛況のうちに幕を閉じました。これはバレンシアでの数ある経験のうちでも、かなり貴重なものであったと断言できます。
クリスマスイベントを終えると、以前から計画していた旅行に出発しました。最初の目的地はイタリアの南部に位置する港町バーリ(ネット検索するとインドネシアのバリ島とよく混同される)で、大学寮にて知り合った知人を頼りに二泊ほど当地で過ごしました。食べ物は美味しい上にべらぼうに安く、町並みも歴史を感じさせるバロック建築・ロマネスク建築に溢れ(知人にガイドを頼んだので説明され倒しました、自分の故郷をガイドできるって素敵ですね)、人々も温和で親切で好奇心が強く、特に夕食を共にした知人の更に知人たちが日本に大変興味を持っていたお陰で楽しい夜を過ごしました。イタリア語を本当に挨拶程度しか勉強していなかったので、不慣れな英語や知人の通訳を介して意思疎通を行ったものですが(西語も部分部分で通じますがやはり別言語ですね)、出来れば日本帰国までにもう少し勉強して再度訪れたいと思っています。
次に訪れたのがスイスのジュネーブ、時計と銀行とチョコレートで有名な国ですね。空港でどちらを向いても時計か時計の広告が視界に入ってきたのには思わず笑ってしまいましたが、街並みが特に素晴らしく、まさに日本人が思い描くヨーロッパといった趣で、カメラが常にフル稼働していました(確認すると撮影数がダントツの首位でした)。しかし物価の高さが予想以上に凄まじく、スーパーで買ってもプリングルスの缶が5スイスフラン(約500円)という恐ろしい情況で、実はイタリアで飛行機を逃してしまいスイス滞在が一日削れたのですが、余分な飛行機代で差し引きは結局マイナスなのに何故か安心したのは今でも不思議です。こちらの知人とは日程が合わず一人旅だったので余計に、というのもあったでしょうが。
最終目的地はイギリスのロンドンで、こちらでもバレンシアで知り合ったErasmus仲間にガイドを頼み、年末年始を当地で過ごしました。年越しのカウントダウン前後でロンドン市内が異様な空気に包まれ、若者の雄叫びとガラス瓶の割れる音で溢れかえったのは印象的でもあり、良くも悪くもイギリスに対する印象が変わりました。大晦日と元旦以降で違う宿に泊まったのですが、年越しの混乱で滞在先ホステル(の泊まる予定の部屋)がとんでもないことになったらしく、チェックインに数時間を要する事態となったのはもはや笑うしかありませんでした。他にも美術館や各ランドマークを案内してもらったのですが、一番印象に残ったのが年越し前後の「僕の知ってる英国と違う……」といったそれに尽きるのが、いやはやなんとも。
色々と予定外の事態に見舞われた旅行でしたが、それでもこれまでにない体験も出来ましたし、全体としては良い思い出だったと終わってもいいんじゃないでしょうかね。いや、楽しかったですよ、本当。
旅行も終えてバレンシアに帰ってくると、次に待っていたのは年明けの期末考査です。同じく各地から帰って来た寮生たちと新年の挨拶を交わしつつ試験に向けて勉強に邁進する……かと思いきや、まだまだ寮はガラガラで静かということもあり、かなりギリギリまで遊興に耽ってしまいました。とはいえいつまでも遊んでいるわけにもいかず、漸次勉強を開始しつつ試験に臨んだわけですが、このレポートを作成している27日現在ではただ一つを除いてまだ結果が出ていません。手応えは有るような無いような、結果待ちの試験はどれも記述式のものだったので戦々恐々しながら次学期の準備を進めております。仮に今回が駄目であった場合、6月に再試験の機会が与えられるのでそこまで悲観的にはなっていませんが、大学に続いて語学学校の試験も来月に控えているので、とりあえずはこれに向けて勉強を進めて行きたいと思っています。