教育と授業について
デンマークでは、ホリスティック教育(注1)が提唱されています。幼い頃から、“ you were born unique, don’t die like a copy”という言葉が心の奥まで刻まれています。「ギャップイヤー」といった制度があり、旅をしたり、「エフタスコーレ(efterskole)」(注2)に短期進学したりして、自己発見に力を注いでいます。友人のStefanieさん、医学部に進学する前に、中学校や高校を卒業した時点で、二回もギャップイヤーを取り、旅をしたそうです。また、Josefineさんは、エフタスコーレで、外国語、音楽、芸術など専門的なコースを体験し、工芸の道に進むことにし、もっと深く勉強するために、大学に進学したそうです。こうして、日本でも東京大学などは2013年から、学生が主体的に様々な活動に取り組む環境を整えることで、受身や内向きの姿勢を脱して大学で学ぶ意義や目的を発見してもらうために、入学直後の学生が一年間、特別に休学して、ギャップイヤー制度に相当する仕組みを導入すると日経新聞が記しました。
デンマークでは、18歳を超えたら、授業料に対する支払い責任は親から政府へ移り、また親と同居しているか否かにより、最大5000DKKの生活料が支給されると同僚のSteffenさんが話してくれました。ただし、大学の授業は同じ科目を三回不合格になると退学の恐れがあります。要するに、大学に進学する学生たちは、きちんと将来の道を決めているので、やる気満々の勉強熱心な学生が多いです。
オーフス大学における授業の形式は密集的であり、春学期として二月から六月までの間、講義は前半の三ヶ月で週二回、五月と六月はほとんど講義がない、試験の準備期間になります、だから密集的だと思います。宿題があまりなく、出席も取らないかわりに、先生が提示したシラバスに従い、予習と復習をしなければ、期末試験で不合格になる確率が高いそうです。春学期に取った5科目の授業の中で、最も厳しかった「STRATEGIC MANAGEMENT AND ORGANIZATION(略SM&O)」を例に説明します。週二回FL typeの授業とHold typeの授業がありました。まず、FLで理論を中心に説明する大人数の授業です。最初の授業でも、シラバスの説明が済んだ後、早速事例の討論に入りました。日本であれば、最初の授業が早めに終わることが多いのに対して、こちらの授業は効率的な授業でした。翌日、Hold で20人ほどの少人数に分かれて、教室がワークショップ会場のようでした。FLで学んだ理論と学説をふまえて、この場で事例をクラスメートとディスカッションしたりディベートしたりします。先生は教える立場から聞くほうになり、生徒たちが考えたことがつながるように指導します。ほとんど話さないが、疑問があればアドバイスをします。授業で討論してほしい事例は、Campus-netにアップロードされるので、事前に問題を読み、回答していないとグループの荷物になるから、必ず予習しなければなりません。このように、理論と事例討論を同じくらい重要だととらえ、常に考える能力を訓練しているから、専門知識は身につき、自分の意見も論理的に述べられるようになるのでしょう。
SM&Oの合格率は低い、4以上が合格
注1)ホリスティック教育( Holistic Education)とは、知育、徳育、体育などを別々にせず、また、人間と自然界とのつながりを全体として重視することを理念とする教育の新しい考え方。
注2)エフタスコーレ(Efterskole)とは、全寮制でデンマーク独特の学校形態である。精神的に人間形成が調っていない学生に対しては、更に1年学習支援を通じ、人間形成を磨く。
学生寮(下)
13人いる僚友の大部分はデンマーク人です。デンマーク人は共通の居間で、テレビを見ながら、時事問題や恋愛のことなど話し合い盛り上がったりします。たまにDVDを借りてきて一緒に見ながら、おしゃべりなんかもします。棚の中には、いろいろなボードゲームが置いてあります。学生寮なのに、快適なソファやカラフルなデコレーションが飾ってあり、さすがインテリアが有名な国だけのことはあります。デンマークの天候は変わりやすいです。とりわけ、冬の場合は風が強く、吹雪が舞い、かなり厳しい天気です。そういうわけで、家で過ごす時間が長いため、心地いい居住空間は重要であり、室内で楽しく遊べるボードゲームがかなり発展しているのです。
私の部屋のフロアはデンマーク人が多いので、デンマーク式の管理法で生活しています。デンマークという国は、最大50%近い税金を課せられます。生まれてから死ぬまで生活上基本的なもの、たとえば医療、教育などは無料であり、高い福祉国家と呼ばれています。前回のリポートでキッチンの道具や調味料が共同で利用されることを書きましたが、その資金源は我々が毎月払う30DKKです。また、日常の飲食料品は税金が安いドイツで大量購入し、使用する際は記録して、チャージしたお金から落とします。例えば、ビールをスーパーで買うと、一本20DKKで 、三本で50DKKです 。しかし、国境を越えて買ってきたビールは一本5DKK で飲めます。
キレイなキッチンを守るため、週ごとに分けて「kitchen duty」制度があります。一人一週間担当し、流し台のまわり、テーブルの表面を拭くこと、古い新聞紙やガラス瓶は一階のリサイクル置き場まで運ぶこと、いずれにしても、キッチンをきれいに掃除すること。私たちはこの空間が自分の物のように、大事にする意識を持ち、積極的に動いているのです。でも、友人の寮は「kitchen duty」制度もあるが、責任を果たさないと罰金を取られます。
(左)必要なものを黒板に書いたら、共通資金で利用できる
(右)「kitchen duty」の項目
ルームメート同士の交流を深めるため、日々それぞれのイベントを行っています。「Cooking together」は、月一回二人でホストとして料理を用意し、皆と一緒に食事する日です。人参ケーキを作るのが自慢のStefanieさんと私がペアになって、三月の担当でした。美味しい人参ケーキの作り方を学びたかったが、日程の調整がうまくいかなかったので、手間がかからない台湾料理を作りました。ビーフン炒めと薬膳チキンスープでした。一人30DKK の予算で抑え、10人も来てくれました。「Cozy time」は文字通り楽な時間を作る日です。月一回一人がホストを担当し、ゲームを行ったり、映画を見たり、楽しい時間を送るのです。二月の担当者になったMaxさんは、Cozy timeでお菓子を配って、面白い話をしてくれました。こうして、お互いに理解し合う機会が多くて、深く付き合うこともできるようになります。私は、このフロアに住めて最高です。パーティーでおおぜいの人と知り合うより、ちゃんと座りお茶やケーキを食べながら、何時間もかかって交流する方がリラックスできます。ひょっとすると、欧米式のコミュニティにまた慣れていないのかもしれません。
(左)「cooking together」の活動分担表、担当者が当日の料理を書き、参加したい人は自分の部屋番号に○をする。友達を連れてくることもできる。その際、○した上で+1と書く。
(右) 楽しく食事をしている