① この留学を振り返って
私はオランダに渡航してから帰国までの間、ずっと考え続けていた問いが1つありました。
それは、「なぜ留学は“学びを留める”と書くのか」というものです。
留学という言葉には、一見してどこか矛盾があるように感じていました。というのも、実際に私がこの約一年間という月日の中で体験してきたのは、むしろ“学びを広げる”日々だったからです。異なる文化、異なる価値観、異なる生活習慣に触れる中で、自分の視野は広がり続け、知識や経験、考え方においても、国内だけでは得られなかった学びを日々享受してきました。
新しい土地に身を置き、多様な人々と交わることは、固定された思考からの解放であり、更新の連続でした。だからこそ、「学びを“留める”」という言葉が、私には少し不自然に感じられ、どこか引っかかりを覚えていたのです。
しかし、留学生活が終わりに近づき、これまでの経験を振り返る中で、私はこの言葉に別の意味があるのではないかと思い始めました。
確かに、留学は“広げる”学びでもあると思います。しかしそれと同時に、その学びを一過性のものとして流してしまうのではなく、自分の中にしっかりと留め、自分のモノにしていく過程でもあったと思うのです。
「留学」の“留”は、単に「とどまる・とどめる」のではなく、「腰を据え、地に足をつけて学ぶ」や「得たものを確かに刻み込む」という意味を持つのかもしれません。そしてそれは、他国の文化や知見に触れて終わりではなく、それらを「自分の内に定着させる」ことこそが、留学の本質なのだと今では思います。
そう考えれば、「留学」とは、やはりよくできた言葉だと思えます。
私はこの学びを、これからも自分の中に“留め”、時に思い返し、問い直し、語り続けていくことで、この留学が単なる経験ではなく、生きた学びとして持ち続けていけると信じています。
②留学経験をどのように活かすか
今回のオランダ留学で私が得たものは、単なる語学力や知識にとどまりませんでした。
それ以上に大きかったのは、「異なる価値観と向き合い、それを受け入れる柔軟性」や「環境の変化に適応し、自ら行動する主体性」といった、どこにいても生きられる人間力/生活力だったと感じています。
こうした学びは、今後社会に出ていく上で、あらゆる場面で活かしていけると思っています。
たとえば、国際的なチームでの協働や、多様な顧客とのコミュニケーションにおいて、相手の背景を尊重し、立場を想像しながら対話する力は非常に重要です。私は留学中、さまざまな国籍の友人たちと関わりながら、言語の壁を越えて「伝える」努力を積み重ねてきました。その経験は、今後の仕事の場でもきっと生きてくるはずです。
また、慣れない地で自炊し、銀行口座を開設し、旅行を計画するという普通の生活のなかで、「自ら道を開拓する」感覚を身をもって経験できました。これからの人生においても、未知の状況を恐れず、自らの判断と責任で一歩を踏み出す勇気を、この留学経験から持ち続けていきたいと思っています。
将来的には、グローバルな視点を持った人材として、ただ海外経験がある人間としてではなく、「留学で得た価値を日々の言動で体現できる人間」として、自らを磨き続けていきたいと考えています。