Center for the Promotion of Global Education

グローバル教育推進センター交換留学マンスリーレポート

リヨン第三大学
2014年5月号 文学部 G.T

この留学を振り返って、及び帰国後どう留学経験を生かす予定か

一年弱の留学を振り返って一番強く思うのは、“フランスでの生活”という非日常が日常に変わったという事です。フランスに着いた当初の右も左も分からない状況、全く役に立たないと言って良いくらいの自身のフランス語など、一時は部屋から出るのもフランス語を耳にするのも嫌になるくらい、異国での生活は衝撃的なものでした。

しかし、前にもカルチャーショックについての項目で書きましたが、ある程度経つとどんなに衝撃的だった事にも大体慣れ、また普段の生活の中で驚く事が少なくなっていきます。買い物の毎回の挨拶も、日曜や夜には閉まってしまうお店や、道端に大量に落ちている吸殻も、どれも当たり前になっていきます。また、買い物時の挨拶がなどのこちらの常識や習慣は次第に身について行きます。もちろん完璧ではありませんが、そういう生活様式が自然と自身の生活に溶け込んでくるのです。

そうなってくると今度は、自分は誰か、という問題を良く考えるようになりました。日本から遠く離れ、それまで自分を囲んでいた社会、世界が全く違う姿をして自分の前に現れる。しかも、日本にいた時とは違う行動を自然に取って生活している自分がいて、それまで自明の事のように思っていた自身の生活習慣、様式をまるで違う物に取り変えてしまっているのに、それで生きている。同時に、フランスに来た当初はあれほど強く感じていた“自分が日本人(外国人)で、フランスという異国にいる”という感覚が次第に無くなり始めていることに気付きました。もちろん日本語や日本に関係するものや事は特に気になりますし、その時は日本人として考えてしまいます。当然ながら自分が完全にフランス人化したなどという事もありません。ただ、例えば皆さんも普段の生活の中で自分が何者なのかとか“自分は日本人だ”なんて特別考える事は滅多にないでしょう。それと同様に、私にとってフランスでの生活が日常の一つとなったということです。

しかし、この留学経験を何に生かすか、と問われても正直どう生かせるのか、自分自身良く分かりません。当然ながらフランス語の学習はこれからもずっと続けて行きますが、自身のフランス語が仕事に使える域には程遠いことは自分自身が一番良く分かっています。フランスでの生活の仕方なら多少身についているのでしょうが、それが日本では役に立たないことは明らかですし、違いがあるからこそ意味があるのです。

ただ、私はこの留学で全くの非日常が日常に変わる経験をしました。将来、仮に今回と同じように全く異なる環境に身を置くことになっても、必ずどうにかなる事を知っていますから、どんな場面でも必要以上に臆病になったり不安になったりはしないでしょう。

また、そこに至るまでにどんな苦労があるのかを知っています。この留学で、自分一人で出来る事の限界や、また反対に自分から行動しなければ何も結果を得られない事、勇気を持って挑戦する事や、他人に頼ったり協力したりする事の大切さを知りました。そして、自分に親切にしてくれる人の有り難さ、反対に騙したり利用したりしてくる人もいて、それに対して注意を怠らない大切さなど、様々な事を学び、経験しました。これらは自分の生き方、考え方を大きく揺さぶり成長させる糧となりました。この経験は様々な場面で生きる事と思います。

それからもう一つ、言葉が人と人とを繋ぐ橋であること、フランス語に限らずあらゆる言語は世界への扉なのだと知りました。私はフランスで多くの人と会い、友人も出来ましたが、その殆どが、言葉が通じるから繋がる事が出来たのだと強く思います。もしフランス語が話せないまま、一年ここに居たとしても誰とも見ず知らずの他人のままだったのではないかと思います。私はフランスが初めての外国なのでこれは想像ですが、もし海外旅行に行って言葉が通じないとしたら、現地の人よりも景色や食べ物、特産品に目が行ってしまって、帰ってからその土地の人の事を思い出す事はないような気がします。そういう意味で、言葉を知り、話せるという事は世界を広くするのだと思います。

最後に、折角なのでフランスで知った素晴らしい食べ物を一つ紹介したいと思います。それはFromage de Chèvre山羊チーズです。山羊チーズは白色で種類も豊富なのですが、基本的にとても濃厚で酸味もあり、加えて臭いも少々独特です。日本では目にした事が無く、最初食べた時は“何これ?!”と思いましたが、食べ進めるうちにその深い味わいと舌に残る後味に魅了されてしまいました。フランスのレストランなどではピザのトッピングや、サラダの上に載っている事が多く、私はトマトやサラダと一緒にバゲットに挟んでよくサンドイッチにして食べていました。以前、ブルターニュに行った際に山羊チーズに蜂蜜をかけたクレープを食べた事があるのですが、蜂蜜を足すとまろやかさが増してとても美味しいです。もし山羊チーズを見かけたら勇気を出してぜひ一度食べてみて下さい。

【山羊チーズ】