① 余暇の過ごし方
素晴らしい天候に恵まれるようになった中で、人々の余暇の過ごし方も春めいてきました。
街ではピクニック用のブランケットを抱えて歩く人や、子どもと一緒に自転車で郊外へ向かう家族連れなど、どこかしらに春を楽しみに行く人たちの姿をよく見かけます。
そして、この時期になると必ず話題にのぼるのがチューリップです。
皆こぞってピクニックや“チューリップ狩り”に出かけている印象です。
正確には「狩り」ではなく「観賞」なのですが、あまりにも多くの人がその美しさに引き寄せられて出かけていく様子を見ると、まるで「花を狩る」ような熱気を感じずにはいられません。
チューリップといえば、まずその名が挙がるのがキューケンホフ公園です。
世界的に有名な花の楽園で、色とりどりのチューリップが見渡す限りに広がっています。
しかし、実際にはキューケンホフだけでなく、オランダ各地に点在するチューリップ畑でもその美しさを堪能することができます。
広大な畑に一面に咲き誇る花々や、また列車の窓から見えるその景色には、思わず息をのみます。
4月下旬ともなれば、日の入りは21時を過ぎます。
日本では考えられないほど長い昼の時間があり、たっぷりと明るい時間を楽しむことができます。
仕事や学校が終わったあとでも、まだ日差しが残っていて、ゆっくりと散歩したり、夕方から郊外に足を延ばしたりすることができるのです。
時間に追われずに自然と向き合うことができるこの季節は、まさにオランダの春の醍醐味です。
自然の変化に誘われるように、自分の気持ちや行動にも少しずつ変化が現れていることに気づきます。
これまでなら見過ごしていた小さな季節の兆しに目を留めたり、なんとなく外の世界に心を開いたり。
そんなふうに日々を感じられる今の暮らしを、私はとても大切に思っています。
② 本領を発揮し始めたオランダ
4月に突入し、気温も徐々に上がり始めました。
朝晩はまだ少し冷え込むものの、昼間の陽光には確かな力強さがあり、春の訪れを日々実感させられます。
街の至る所ではタンポポが黄色い花を咲かせ、その後すぐに綿毛となって空気中をふわふわと漂っています。
風に乗ってふと部屋の中に舞い込んでくるその様子は、どこか絵本のワンシーンのようで、目に映る景色に心が和みます。
窓から見える中庭の木々もすっかり青々と茂り、冬の間じっと沈黙していた自然が、ようやく目覚めて動き出したかのようです。
万年インドア生活だった私ですら、何も予定がなくともふらりと外に出てみたくなる日が増えてきました。
特別な目的がなくても、ただ散歩するだけで気持ちがよく、そう思わせてくれるのはきっと空気のやわらかさと陽のぬくもり、そして花粉の少なさによるところが大きいのでしょう。
私は花粉症ではありませんが、日本の春特有のムズムズした感じがなく、呼吸がとても楽です。
こちらの空気は「おいしい」というより「やわらかい」感覚です。
肌に当たる風もやさしく、自然と深呼吸したくなるような心地よさがあります。暮らしていて、本当に気持ちがいいと感じます。
ようやくオランダの自然環境が本領を発揮し始めた、そんなふうに思える日々が続いています。