Center for the Promotion of Global Education

グローバル教育推進センター交換留学マンスリーレポート

リヨン第三大学
2022年10月号 文学部 A.H

リヨンに着いて2か月が過ぎました。学期が始まってからすでに1ヵ月以上が過ぎ、今月末から来月頭にかけてはvacances de la Toussaintという短いバカンスがあります。それを前に、現在はそれぞれの授業で中間テストが行われています。

今月号では、生活環境とストライキについてお話します。

①生活環境について

まず生活環境について、大学と住居の2つの観点からお話していきます。

〇大学

Lyon 3は想像していたより物理的にかなり小規模な大学でした。ちょうど大宮学舎ほどの広さかなと思います。ですが学生の数は大宮よりかなり多いように感じます。また、Lyon 3にはManufacture des Tabacsというメインキャンパスの他、ローヌ川沿いにCampus des Quaisというキャンパスがあり(更にもう一つあるようですが、私は詳しく知りません)、faculté de Philosophieや、faculté des Lettresの高年次の講義などは後者のキャンパスで開講されています。今回は主にTabacsについてお話します。

-図書館

図書館(BU)はいつも学生で混み合っていて、友達と一緒に勉強するときは座席を見つけるのに苦労します。私語禁止フロアとグループワークフロアがあり、後者では共同作業する学生を多く見ます。私も先日授業でグループプレゼンをした際、練習に利用しました。

-学食

キャンパス内には食堂が2つ、boulangerieが1つあります。2つの食堂のうち1つでは3.3€から前菜とメイン、デザートを組み合わせて食べることができます。食堂で提供されるご飯はおおむね美味しいです。学外で食事するより値段を抑えられますし、一人暮らしだと敬遠しがちなお肉や魚を食べられるので朝から夕方まで授業のある日はよく利用します。

 

-時間割

こちらは日本のような1限(90分)、2限(90分)…といった時間割ではなく、授業ごとに講義時間の長さがまちまちです。60分の授業もあれば90分、120分、180分の授業もあります。ゆえに全学統一の定まった休み時間がありません。自身の履修科目によっては、休み時間なしで複数の授業が連続することもあります。私も120分→90分の授業が連続している日があり、授業が開始する前は遅刻しないかと不安でしたが、蓋を開けてみれば時間通りに始まる授業は少ないので杞憂でした。

また、キャンパス内には明快な案内表示がないので、数週が過ぎた今も教室を見つけるために授業毎にキャンパス内をさまよっています。修士課程に在籍している友人も未だに教室の場所が分からないからキャンパスの地図を持ち歩いていると言っていました。フランスでの生活はこういった不便が多いですが、それも≪C’est la vie !≫と笑って受け流せるタフさは既に身に着いたような気がしています。

 

〇住居

私はCrousというフランスの公的機関が運営している寮の一つに入居しています。こちらで知り合った日本人留学生のほとんどはCrousの寮に入居していますが、正規の学生は民間のアパルトマンで生活している人も多い印象です。寮から大学までは、métroを使って約20分ほどです。新築でとても清潔ですし、部屋の設備にも不備はありませんでした。私は部屋にトイレとシャワー、キッチンが備わっているstudioタイプの部屋を選びました。家賃は約400€/月です。CAFの申請はまだ完了していませんが、試算では180€ほどの補助を受けられるようです。

-寮の設備

寮内にはランドリー、自習室、多目的ルームがあります。多目的ルームでは、soiréeやgame night、yoga class、sport sessionなどがCrous主催で頻繁に催されています。その全てには参加していませんが、今のところ私は週に1度のsport sessionがお気に入りです。Crousのイベントは地区ごと(私の場合はリヨン8区)に催されていて、それぞれの地区によって内容や頻度も異なるようです。

次に、多くの場合出発の数か月前に日本から住居探しをすることになると思いますが、住居選びに際して個人的に気を付けてほしい点がいくつかあります。

-地区

先月号でも述べましたが、Guillotièreという地区は本当に治安が悪いです。その中でも場所によって程度は異なりますが、 Tabacsのほど近くからQuais周辺の地区に当たります。あるフランス人の友人は昼間ですら一人では絶対に行かないと言っていましたし、私も決して一人で行かないよう念を押されました。性別に拘わらず、この地区は避けてほしいです。

-最寄駅(大学)からの距離

特に治安の悪い地域を避けたとしても、それ以外の地区でもやはり日本と比べると治安はよくありません。私の寮から最寄り駅までは徒歩約5分の距離ですが、たった数分ではあるものの、人通りの少ない時間帯や夜に一人で歩くのは少し怖いです。同じ寮のフランス人の友人たちも、夜に一人で歩いて帰るのは怖いと言っていました。なので、女性は特に、事前に大学までの移動手段を調べ、利用する駅からの距離ができるだけ短い寮を選ぶことを勧めます。

そして、これは私の肌感覚ですが、大学から徒歩圏内の寮には日本を含む外国からの留学生が多く入居している印象です。私の寮は大学から少し離れているからか、知り合う学生のほとんどが正規学生です。かなり大きな寮ですが、未だに日本人とは出会っていません。知り合う学生はみなネイティブばかりなので、語学を伸ばすという意味では理想的な環境だと思います。ですが、いざというときに母語で情報を共有したり助けを求められる友人が身近にいないのは、少し心細いのも事実です。ご自身の語学力に合わせて、必要であればこういった点も考慮されたほうがよいかもしれません。

 

②ストライキについて

日本でもよく知られていることだと思いますが、フランスはストライキ(grève)の多い国です。これまで私自身が直接経験したのは公共交通機関の運行が止まるくらいのものですが、今回はフランスのストライキについて、そしてそこから私が抱くフランス人の印象について、私自身の勉強も兼ねて、調べつつ書いてみようと思います。

今月初旬ごろから、町のガソリンスタンド(station-service)で複数台の車が道路にはみ出して並んでいるのをよく見かけていました。リヨンのみならずフランス全土で同じようなことが起こっているらしいことは耳に挟んでいたものの、しかしその詳しい要因は知りませんでした。調べてみると、その原因は大きく次のようなものでした。

-9月27日にTotalEnergiesグループの製油所と倉庫でストライキが開始された。このストライキは、インフレーションへの対応と同社が社会から享受した利益の還元として賃上げを要求している。これにより、ガソリンスタンドは供給における重大な困難に直面している。

ガソリンスタンドの混雑の要因はエネルギー会社のストライキにあるようです。その背景については私には力不足なので今回はさておき、私が気になったのは、このストライキはその時期が考慮されていないように思われることです。

-これからバカンスを過ごす多くの人々がガソリンスタンドに列をなしていた。

-給油を待ち列に並ぶある人は「このところは出来るだけ車をガレージに置いたままにして、在宅勤務をしていた」、「バカンスに出発するため、ガソリンを満タンにするのを本当に待っていた」と話す。

-経営陣がそれ以前に交渉に応じない限り、ストライキは10月27日まで続けられることがCGT(フランス労働総同盟)の代表によって発表された。

前述のとおり、10月末からはフランス全土でバカンス期間です。バカンスを目前にしたこの時期に、交通に関わる大規模なストライキが行われているんです。面白いと思いませんか?国民生活に大きな影響を及ぼすことが明白であるにも拘わらず、もしくはその時期にも意図があるのかもしれませんが。

これに通ずるように感じるのが、フランスではほとんどのお店が日曜日に営業していないことです。これにはキリスト教的な理由も関係しているようですが、フランスで生活していて私が強く感じる日本との違いの一つです。

あるいは、フランス人は「待つ」ということに慣れているように感じます。フランスで生活していると、種々の手続きからスーパーや学食のレジ、学生部への問い合わせまで、何かを待っている時間が日本と比べて長いです。配慮の行き届いた快適な日本での生活に慣れていると、このようなフランスの空気感にはやきもきすることもままあります。しかし、意外なことに、「待つ」ということに関して、フランスの人たちはあまりいらだっている様子はありません。

個人的に、フランスでは、手続きのスムーズさや公共の快適さを求めること以上に、個人あるいはプライベートの休息や利益、権利を主張し確保することの意義がより濃いように感じます。だからこそ、誰かの休息や権利のために待たされても、笑いながらそれを受け入れることができるのかなぁと思っています。そして、かくいう私もその雰囲気に馴染みつつあります。

日本とフランスのどちらかがすぐれているということはありませんし、一長一短だと思います。しかし、休日にカフェのテラス席でいつまでものんびり談笑しているフランス人を見ていると、時間の流れ方が日本とは異なるのではないかとまで思うくらいにゆるやかな雰囲気を感じます。フランスでの生活は不便なことが多いです。ですが、1年間の留学を終えて日本に帰国するとき、整った日本での生活がやや窮屈に感じるかもしれないなとも少し思っています。

ソーヌ川沿いのマルシェ

 

 

参考文献

 “La grève continue chez TotalEnergies, les premiers vacanciers font la queue aux stations-service”, 20 Minutes, 2022/10/21.

https://www.20minutes.fr/economie/4006504-20221021-greve-continue-chez-totalenergies-premiers-vacanciers-font-queue-stations-service(参照2022/10/26)